「社員にAI研修を受けさせたいが、費用がネックになっている」「事業展開等リスキリング支援コースという助成金があると聞いたが、自社のAI研修が対象になるのか分からない」。人事やDX推進のご担当者から、こうしたご相談を多くいただきます。
結論からお伝えすると、事業展開等リスキリング支援コースは、要件を満たすAI研修であれば中小企業で経費の75%が助成される、AI研修と非常に相性のよい制度です。ただし、2026年8月3日の改正で「汎用的なプロンプト学習は対象外」という線引きが明確になったため、研修内容の設計を誤ると対象から外れてしまいます。
本記事では、コースの位置づけ、対象となる3類型、訓練の要件、助成率・限度額、そして「どんなAI研修なら該当するのか」を、2026年8月時点の情報に基づいて整理します。
事業展開等リスキリング支援コースの位置づけ
事業展開等リスキリング支援コースは、厚生労働省の「人材開発支援助成金」に設けられたコースの一つです。企業が事業展開やDX化・GX化に対応するために社員へ訓練を実施した場合、その経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
このコースの大きな特徴は、助成率の高さです。経費助成率は中小企業で75%、大企業で60%と手厚い水準に設定されており、生成AIの業務活用など「事業のデジタル化」に向けた研修を後押しする制度であるため、AI研修の費用負担を抑えたい企業にとって第一の選択肢になります。
一方で注意点もあります。このコースは令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。恒久的な制度ではないため、活用するなら計画的に動く必要があります(詳細は後述します)。
対象となる3類型と「事業展開」の定義
このコースの対象となる訓練は、次の3類型のいずれかに該当する必要があります。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| ① 事業展開に伴う訓練 | 新たな分野への進出に伴い必要となる知識・技能の訓練 |
| ② DX化・GX化に伴う訓練 | 事業のデジタル化(DX)・グリーン化(GX)に対応するための訓練 |
| ③ 人事・人材育成計画に基づく訓練 | 人事・人材育成計画に基づく訓練(令和8年3月2日追加) |
「事業展開」とは何を指すか
①の「事業展開」は、制度上「新たな製品の製造や新たな商品・サービスの提供等により新たな分野に進出すること」と定義されています。たとえば、既存事業に加えて新しいサービスラインを立ち上げる、といったケースが典型です。
AI研修は主に②DX化の類型
AI研修の場合、多くの企業は②「DX化・GX化に伴う訓練」として申請することになります。生成AIを業務に取り入れること自体が事業のデジタル化に当たるためです。ただし、2026年8月3日の改正でDX・GX訓練の対象は絞り込まれ、「職務に間接的に必要となる知識・技能」や汎用的な内容は対象外とされました。この線引きは後の章で詳しく解説します。
また、③の類型は令和8年3月2日に追加された枠で、事業展開やDX化と直接結びつけにくい訓練でも、人事・人材育成計画に基づくものであれば対象となる可能性が広がっています。
対象訓練の要件:10時間以上のOFF-JT
類型に該当するだけでは足りず、訓練そのものが次の要件を満たす必要があります。
- 訓練時間が10時間以上であること
- OFF-JT(業務と区別して実施される訓練)であること
OFF-JTとは、通常の業務から切り離して行う訓練を指します。「先輩社員が業務中に教える」といったOJTは対象になりません。外部の研修会社が提供するAI研修は、通常この要件を満たしやすい形式です。
なお、2026年4月8日の改正で、定額制サービスは受講者1人あたり10時間以上の受講が必須となりました。また、eラーニング・通信制の訓練は経費助成のみで賃金助成はなく、限度額も低く設定されています(次章の表をご覧ください)。
助成率・限度額の一覧表
助成は「経費助成」と「賃金助成」の2本立てです。2026年度の水準は以下のとおりです。
助成率・賃金助成
| 区分 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
経費助成の限度額(1人1訓練あたり)
| 訓練時間 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10〜100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100〜200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
eラーニング・通信制の場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成の種類 | 経費助成のみ(賃金助成なし) |
| 限度額 | 一律 中小企業15万円/大企業10万円 |
| 設備投資加算 | 対象外 |
たとえば、受講料40万円・約12時間のAI研修を中小企業が実施した場合、経費助成は40万円×75%=30万円(10〜100時間未満の上限30万円に一致)となり、自己負担は10万円。さらに賃金助成が1,000円×12時間=1.2万円付くため、実質負担は約8.8万円(78%オフ)まで下がる計算です。
なお、2026年4月には中小企業限定の「設備投資加算」も新設されました。訓練に関連する設備の導入費用の50%(1人15万円、10人以上は150万円が上限)が加算されます。
※支給決定は各都道府県労働局の審査によります。上記はあくまで制度上の水準であり、支給を保証するものではありません。
どんなAI研修なら対象になるか:業務直結型と汎用型の線引き
AI研修でこのコースを使ううえで最も重要なのが、2026年8月3日改正で明確化された「生成AI研修の線引き」です。
対象になるAI研修:具体的業務に直結する訓練
改正後の基準では、具体的業務に直結する訓練が対象とされています。制度上の例として挙げられているのが「営業向け提案書作成訓練」です。つまり、次のような設計の研修が該当します。
- 営業職向け:生成AIを使った提案書・商談準備の作成訓練
- マーケティング職向け:SNS運用やコンテンツ制作に生成AIを組み込む訓練
- バックオフィス向け:経理・総務などの定型業務を生成AIで効率化する訓練
いずれも「誰が・どの業務で・何のためにAIを使うか」が明確な、職種別・業務直結型の内容です。
対象にならないAI研修:汎用的な内容
一方、汎用的なプロンプト学習は対象外と明示されました。「職務に関接的に必要となる知識・技能」も対象から外れています。職種を問わない「生成AIの基礎・プロンプトの書き方」だけの研修や、実際の業務と結びつかない一般教養的なAIリテラシー研修は、対象外となるリスクが高いと考えられます。
企画段階から「受講者の職務にどう直結するか」をカリキュラムに落とし込めるかが、対象・対象外の分かれ目です。研修会社を選ぶ際も、職種別にカスタマイズできるかを確認することをおすすめします。
あわせて知っておきたい改正点
2026年の改正では、線引き以外にも実務上重要な変更があります。
- 同一労働者の年度内受講は3回まで、eラーニングは年度1回まで(8月3日)
- 密接関係者への支払いは経費助成の対象外(4月8日)
- 「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が義務化(5月14日)
- 支給申請額100万円以上の不正受給は原則事業主名を公表(8月3日)
時限措置に注意:制度は令和8年度末まで
冒頭でも触れたとおり、事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。
さらに、申請には準備期間が必要です。訓練開始の6か月前〜1か月前に計画届を提出する必要があり、その前段として職業能力開発推進者の選任や事業内職業能力開発計画の策定も求められます。準備には3〜6か月かかるケースが多いため、「制度終了の直前に動き出したが間に合わなかった」という事態を避けるべく、逆算して早めに準備を始めることをおすすめします。
よくある質問
Q1. AI研修はどの類型で申請すればよいですか
多くの場合、②「DX化・GX化に伴う訓練」として申請します。生成AIの業務活用は事業のデジタル化に該当するためです。新規事業への進出に伴うAI活用であれば①「事業展開に伴う訓練」、人事・人材育成計画に基づく訓練であれば③の類型に該当する可能性があります。最終的な判断は各都道府県労働局の審査によります。
Q2. 10時間に満たない短時間のAI研修は対象になりますか
なりません。対象訓練は10時間以上のOFF-JTであることが要件です。半日セミナーのような短時間の研修は対象外となるため、助成金の活用を前提とするなら10時間以上のカリキュラムで設計されている研修を選ぶ必要があります。
Q3. eラーニング形式のAI研修でも使えますか
使えますが、条件が異なります。eラーニング・通信制は経費助成のみ(賃金助成なし)で、限度額は一律で中小企業15万円/大企業10万円です。また、2026年8月3日改正で同一労働者のeラーニング受講は年度1回までとなり、定額制サービスは1人あたり10時間以上の受講が必須です。助成額を重視するなら、通学(対面・オンライン)形式のほうが有利になるケースが多いでしょう。
Q4. 申請すれば必ず助成金は受け取れますか
いいえ。支給決定は各都道府県労働局の審査によります。要件を満たしているように見えても、訓練内容が汎用的と判断されれば対象外となる可能性があります。正確な計画と申請が欠かせません。
まとめ
- 事業展開等リスキリング支援コースは人材開発支援助成金の一コースで、中小企業なら経費の75%が助成される
- 対象は①事業展開②DX化・GX化③人事・人材育成計画の3類型。AI研修は主に②で申請する
- 訓練は10時間以上のOFF-JTが要件。eラーニングは経費助成のみで限度額も低い
- 2026年8月3日改正により、業務直結型のAI研修は対象、汎用的なプロンプト学習は対象外という線引きが明確化
- 制度は令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置。準備に3〜6か月かかるケースが多いため早めの着手を
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リーフェイ株式会社の「AI DX研修 for Enterprise」は、AI×営業/AI×SNSマーケティング/AI×バックオフィスの3コースを職種別にカスタマイズして提供する、業務直結型のAI研修です。2026年8月の改正後も対象となりやすい「具体的業務に直結する」カリキュラム設計を前提としています。
- 受講料40万円(税込)/人・約12時間の研修が、助成金適用で実質負担約8.8万円(78%オフ)
- 助成金の申請サポートは無料
- オンライン(Zoom)/対面/eラーニング(LMS)に対応
- 1,000名以上の育成実績、法人研修導入100社以上
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※支給決定は各都道府県労働局の審査によります。
※本記事は2026年8月時点の情報です。最新の要件は厚生労働省の公式情報をご確認ください。