「AI研修をeラーニングで受けさせたいが、助成金は使えるのか」という質問は、人事・DX推進のご担当者から非常によくいただきます。
結論からお伝えすると、eラーニングも人材開発支援助成金(事業展開等リスキリングコース)の対象になります。ただし、対面やZoomなどのリアルタイム研修と比べて助成の中身が大きく異なり、経費助成のみ・限度額一律15万円(中小企業)・年度1回までといった制約があります。助成金の効率だけで見ると、リアルタイム型のほうが有利になるケースが多いのが実情です。
この記事では、受講形式3種(対面/オンラインリアルタイム/eラーニング)で助成金の扱いがどう違うのかを整理し、自社に合った形式の選び方まで解説します。
受講形式は3種類。助成金の扱いはここで分かれる
AI研修の受講形式は、大きく次の3つに分けられます。
- 対面(オフライン)研修: 講師が会場や自社に出向いて実施する形式
- オンラインリアルタイム研修: Zoomなどで講師とリアルタイムにつながる形式
- eラーニング: LMS(学習管理システム)等で録画教材を各自のペースで受講する形式
人材開発支援助成金の制度上、重要なのは「リアルタイムかどうか」です。対面とZoom研修は、制度上はどちらも通常の訓練として同じ扱いを受けます。一方、eラーニング・通信制の訓練は別枠の扱いとなり、助成の内容が大きく制限されます。
「オンラインだから助成が減る」のではなく、「リアルタイムでないから助成が減る」という整理を押さえておくと、形式選びで迷いにくくなります。
eラーニングの助成金は「経費助成のみ・上限15万円」
eラーニング・通信制の訓練に適用される制約を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | eラーニング・通信制の扱い |
|---|---|
| 経費助成率 | 中小企業75%/大企業60%(リアルタイム型と同じ) |
| 経費助成の限度額 | 訓練時間にかかわらず一律 中小15万円/大企業10万円 |
| 賃金助成 | なし |
| 設備投資加算 | 対象外 |
| 同一労働者の受講回数 | 年度1回まで(2026年8月3日改正) |
| 定額制サービスの場合 | 受講者1人あたり10時間以上が必須(2026年4月8日改正) |
ポイントを順に見ていきます。
経費助成率そのものは同じです。 中小企業なら受講料の75%が助成される点は、対面・Zoomと変わりません。
しかし限度額が大きく異なります。 リアルタイム型の訓練は、訓練時間に応じて1人1訓練あたり中小企業で30万〜50万円まで限度額が上がります。一方、eラーニングは訓練時間にかかわらず一律15万円(中小企業。大企業は10万円)です。たとえば受講料が高額な本格的コースの場合、75%を掛けた金額が15万円を超えた分は助成されません。
賃金助成が付きません。 リアルタイム型なら受講時間に応じて1人1時間あたり1,000円(中小企業。大企業は500円)の賃金助成がありますが、eラーニングはゼロです。
設備投資加算の対象外です。 2026年4月に新設された設備投資加算(中小企業限定、導入費用の50%、1人15万円・10人以上は150万円が上限)は、eラーニング訓練には適用されません。
年度1回までの回数制限があります。 2026年8月3日の改正で、同一労働者のeラーニング受講は年度1回までに制限されました(リアルタイム型を含む訓練全体でも年度3回まで)。
対面・Zoom研修なら「賃金助成1,000円/時」が上乗せされる
リアルタイム型(対面・Zoom)とeラーニングの違いを一覧にすると、次のようになります。
| 項目 | 対面・オンラインリアルタイム | eラーニング・通信制 |
|---|---|---|
| 経費助成率(中小) | 75% | 75% |
| 経費助成の限度額(中小・1人1訓練) | 30万〜50万円(訓練時間で変動) | 一律15万円 |
| 賃金助成(中小) | 1,000円/時 | なし |
| 設備投資加算(中小限定) | 対象 | 対象外 |
| 同一労働者の年度内受講 | 訓練全体で3回まで | 1回まで |
数字で見ると差は明確です。たとえば当社の「AI DX研修 for Enterprise」(受講料40万円/人・約12時間)をリアルタイム形式で受講した場合、経費助成は40万円×75%=30万円(10〜100時間未満の上限30万円に一致)、さらに賃金助成が1,000円×12時間=1.2万円付き、実質負担は約8.8万円まで下がります。
同じ内容をeラーニング形式で受講すると、経費助成は限度額の15万円で頭打ちになり、賃金助成もありません。「同じ研修・同じ助成率でも、形式の選択だけで受け取れる金額が大きく変わる」のがこの制度の特徴です。
なお、定額制のeラーニングサービス(サブスク型)を使う場合は、2026年4月8日の改正により受講者1人あたり10時間以上の受講が必須となりました。「契約したものの数時間しか視聴していない」という状態では対象になりませんので、受講管理までセットで設計する必要があります。
それでもeラーニングが向くケースはある
助成金の効率だけを見ればリアルタイム型が有利、というのが実務的な結論です。ただし、eラーニングが合理的な選択になるケースも確かにあります。
- 全員の日程をそろえるのが難しい場合: シフト勤務や拠点分散で、リアルタイム受講の時間確保が現実的でない職場では、各自のペースで進められるeラーニングに分があります。
- 受講料が比較的安価な場合: 受講料の75%が15万円以内に収まる価格帯であれば、限度額の頭打ちは実質的に問題になりません。
- 基礎知識の底上げを広く行いたい場合: まず全社員に共通の基礎を学ばせたい、といった裾野の広い教育では、eラーニングの手軽さが活きます。
逆に、AIを業務で使いこなせる人材を本格的に育てたい、助成金を最大限活用して負担を抑えたい、という目的であれば、リアルタイム型を軸に据えるほうが理にかなっています。
形式の組み合わせという選択肢
実務では「どちらか一方」ではなく、組み合わせる設計も有効です。
- 中核メンバーはリアルタイム型、その他はeラーニング: 業務でAIを主導する部門・担当者には賃金助成込みで手厚いリアルタイム研修を、周辺メンバーには基礎のeラーニングを、と濃淡をつける方法です。
- リアルタイム研修を主、eラーニングを復習用に: 助成金の申請対象はリアルタイム研修とし、録画教材は復習・補助教材として位置づける方法です。
なお、どの形式でも助成対象になるには、10時間以上のOFF-JT(業務と区別した訓練)であること、事業展開・DX化等の3類型のいずれかに該当することなど、共通の要件を満たす必要があります。また、2026年8月3日の改正で、汎用的なプロンプト学習は対象外・営業向け提案書作成訓練のような業務直結型は対象、という線引きが明確になりました。形式の前に、まず研修内容が要件を満たすかの確認が先です。
よくある質問
Q1. Zoom研修は「オンラインだからeラーニング扱い」になりませんか
なりません。Zoomなどで講師とリアルタイムにつながる研修は、制度上は対面と同じ通常の訓練として扱われ、賃金助成(中小企業1,000円/時)や訓練時間に応じた限度額(中小30万〜50万円)が適用されます。eラーニング扱いになるのは、録画教材を各自視聴する形式や通信制の訓練です。
Q2. eラーニングでも助成率は下がらないのですか
助成率自体は下がりません。中小企業75%・大企業60%はリアルタイム型と同じです。違うのは、限度額が一律15万円(中小)に抑えられること、賃金助成が付かないこと、設備投資加算の対象外であること、年度1回までという回数制限です。
Q3. 定額制(サブスク型)のeラーニングも対象になりますか
対象になり得ますが、2026年4月8日の改正で受講者1人あたり10時間以上の受講が必須になりました。受講時間の管理・証明ができる体制を整えたうえで活用してください。
Q4. eラーニングとリアルタイム研修を同じ年度に両方受けさせられますか
同一労働者の年度内受講は訓練全体で3回まで、うちeラーニングは1回までです(2026年8月3日改正)。この範囲内であれば組み合わせは可能です。なお、支給決定は各都道府県労働局の審査によりますので、計画段階で最寄りの労働局に確認することをおすすめします。
まとめ
- eラーニングも人材開発支援助成金の対象だが、経費助成のみ(賃金助成なし)・限度額一律15万円(中小)・設備投資加算対象外・年度1回までと制約が多い
- 対面・Zoomのリアルタイム型は、訓練時間に応じた限度額(中小30万〜50万円)に加え、賃金助成1,000円/時(中小)が付く
- 助成金の効率だけで見ればリアルタイム型が有利。一方、日程調整が難しい職場や安価な基礎教育にはeラーニングも合理的
- 中核メンバーはリアルタイム型・裾野はeラーニング、といった組み合わせ設計も有効
- 定額制サービスは1人10時間以上の受講が必須(2026年4月改正)
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※支給決定は各都道府県労働局の審査によります。
※本記事は2026年8月時点の情報です。最新の要件は厚生労働省の公式情報をご確認ください。